2009年1月5日月曜日

『世界経済危機 日本の罪と罰』  野口悠紀雄

 本書はタイトルのごとく現在の金融危機について述べたものである。著者はそのなかで これから日本を未曾有の経済危機が襲うと断ずる。

 今回の金融危機はアメリカ以上に日本の株価下落率のほうが激しい。これはこの件に日本が深く関わっていることの証左である。然るにそれはいかなることか。

 この議論の大前提として、今回表出したサブプライムローンというのはあくまでも表面に現れた現象に過ぎず、その背後には大きなマクロ経済の歪みがあるということを認識しなければならない。

 その歪みの構造を紐解くべく、日本の景気回復と呼ばれた現象を考えよう。〇二年以降 日本の景気は回復したといわれたが、〇八年一〇月二七日にバブル後最安値を記録した。これは、日本の景気回復というものがメッキ張りであったことを示唆している。この虚構を作り出したのは、①金融超緩和と為替介入が日本に異常な円安を起こし、そしてその状態において②アメリカの過剰消費に伴って対米輸出の増加したことによるものだったのである。

 以上の二つの要因は持続性のあるものではなかった。そしてそれらの要因が互解した今、日本の輸出産業は大損失を出しつつあるのである。

 次にアメリカの現状について述べよう。住宅バブルの崩壊、そしてそのあとの経過を見るかぎり、投資銀行のビジネスモデルは崩壊したといえる(ただし、金融工学をこの問題の元凶とする議論には著者は組しない。今回の金融危機は金融工学が厳密に活用されなかったことによるものと著者は述べる。)

 アメリカでは長らく過剰消費が行われてきた。そしてその一貫として住宅がローンで購入され、最終的にはこのようなことになってしまった。住宅を担保に車が購入されていたという事実からすれば、トヨタの得ていた利益というのも多少 その住宅バブルと連動していたものといえるかもしれない。

 この過剰消費を支えていたのが、中国・産油国・そして日本である。アメリカの過剰消費は、経常収支赤字の拡大に結びついた。本来ならそれで円高などが起こるべきだったのだが、たとえば日本は輸出産業を守りたいがために金融超緩和と為替介入をして円安を強制的に起こしていたのである。そしてそこからの資金の還流が、アメリカ人が長い間 消費を謳歌した際の穴埋めになっていたのであった。(ここで日本国民は、己が汗水垂らして働いたお金がアメリカ人に使われていることに憤慨すべきだと著者は述べる。)

 アメリカの経常赤字が解消されない限り、今回の経済危機は解決することはないだろう。そして、その経常赤字が解消されるとともに、日本の経常黒字も縮小していくと思われる。

 日本がこの経済危機を乗り切るには、産業構造を大きく転換させるしかないだろう。

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