2008年12月27日土曜日

『新ネットワーク思考』 アルバート=ラズロ・バラバシ

 ユダヤ教の異端派として迫害されたキリスト教が、本日の西洋世界の主要な信仰となる。高校生のオタクが調子に乗って作ったプログラムが、ウェブの王族たるYahoo!のサーバーをダウンさせる。大学中退組のぼんくら男の造ったiPodが世界的なシェアを獲得する。これらの不思議な現象の背後に、私達はネットワークという法則の存在を垣間見る。

 ネットワーク*1においては、無数のハブがノードと呼ばれるものによって相互に結合されている。そのなかで一部のハブは、古参であるがゆえに、あるいはその環境における適応力が高いがゆえに、多数のハブとノードで繋がる。たとえばネットワークにおいては、Googleなどの検索エンジンが例としてあげられるであろう。  なお、そのような特性であるがゆえに、ネットワークはベキ乗グラフとして表されることが多い。

 ネットワークはその構造から”故障”には強い。仮に多くのノードを繋いでいるハブが”故障”したとしても、多くの場合 それに次いで影響力のあるハブがその故障したものを支えるからである。ただし、最も影響力のあるハブ、そしてそれに次いで影響力のあるハブを潰そうとする”攻撃”には弱いのが特徴である。

 このネットワークという法則が発見されるのは、生活空間、政治、経済などといった、社会的な分野だけに留まらない。数学、生物学、生態学のみならず、最先端の量子力学にも見られるというのだから驚きである。  この法則を鑑みて政策を考える、という動きも既に始まっている。AIDSの蔓延を抑える活動が一つの例である。人が性交渉を持つ割合もネットワーク型になっており 性交渉を多数持つ人間のAIDSを優先的に抑制すれば 全体のAIDSの割合も減少するのである。

 ただし、そこには時たま倫理的な問題が発生することもある。上の政策を例にあげるなら、性交渉を多数持つ娼婦のAIDSの抑制・治癒を 一般的な中産階級の市民よりも優先するのは如何なものか、といったものである。


*1 この要約でネットワークという言葉が指すのは、一般的なスケールフリー・ネットワークであるとする

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